バグダス開発裏話その5:「お手軽じゃなかった移植」

ゲームソフトは、時に他機種への移植が行われたり、リメイクやHDリマスターとして生まれ変わることがあります。これら移植やリメイクの開発難易度はどれ程なのでしょうか。

絵などの素材は揃っているし、プログラムもあるし、そんなの簡単だろう、そう思っていた時期が私にもありました。しかし、実際にはとんでもなく手間が掛かる訳でして……。

さて今回は、バグダスを PlayStationⓇMobile から Android へ移植したときのお話です。

 

PlayStationⓇMobile から Android への移植の経緯

バグダスは最初、PlayStationⓇMobile (以下PSM) 向けのゲームとしてリリースしました。しかし、リリースしてから1ヶ月後、突然 PSM のサービス終了が発表され、その半年後、PSM のサービス終了と共にバグダスの配信も終了しました。

PSM 版バグダスのリリースから終了までの流れ
  • 2015年2月
    PSM 版のバグダスをリリース
  • 2015年3月
    PSM のサービス終了が発表
  • 2015年9月
    PSM が終了、バグダスの配信も終了

PSM 版はリリースのタイミングが悪く、わずか7ヶ月という短い期間で終わってしまいましたが、バグダスをもっと多くのユーザーさんに遊んで欲しいという思いがあり Android への移植を決意しました。

ちなみに iOS への移植は、以下の理由で現在も全く考えていません。

  • iPhone と Mac を所持しておらず満足できるテスト環境がない
  • Apple は年間でデベロッパー登録費用が掛かる

 

手軽で簡単な移植のハズがイチから作り直すレベルに……

PSM から Android への移植を決めて、最初は「すぐに出来るだろう」と楽観視していました。使用するゲームエンジンは Unity の系統だったし、絵などの素材やプログラムもあるし、プロジェクトデータをそっくりコピーして、Android 向けにビルドし直すだけだって。

ところがそうではなかったのです。

最初の問題点として、同じように使えると思っていた Unity が全く別物になっていたことです。PSM で使用していた Unity は「Unity for PSM」という PSM の開発に特化したもので、Android 版の制作には使えません。そのことは事前に知っており、改めて通常版の Unity を入手しました。

そして通常版の Unity を起動してみると、Unity for PSM とは雰囲気が違います。よくよく調べると通常版の Unity はバージョンアップが進んでおり、特にテキストやグラフィックを司る UI 周りの作法が、Unity for PSM とは大きく異なっていたのです。

そのせいでバグダスのプロジェクトデータをそのままコピーして使う事はできず、無理やり入れ込んで実行したところ以下のように酷い有様になりました。

 

次の問題点として、PlayStationⓇVita と Android 端末ではハード的な仕様が異なるというのがありました。特に以下の項目が最たるもので、影響が大きすぎてゲームのつくりそのものを根幹から見直す必要がありました。

項目\機種 PlaystationⓇVita Android
解像度 固定 960 x 544 端末によりバラバラ
アスペクト比 約 16:9 端末によりバラバラ
操作方法 物理的なボタン 画面タッチのみ

 

問題点をまとめると……

  • PSM 版の Unity とは異なり UI 周りのプログラムを作り直す必要があった
  • ハードの違いにより仕様の練り直しや素材そのものを作り直す必要があった

まあハッキリ言うと、イチから作り直すレベルの作業量となりました。そんなこんなで PSM から Android への移植には相当の手間や苦労があったのです。

個人デベロッパーの小規模なゲームでもでもこうなんですから、ゲームメーカーが作る、ちゃんとしたゲームの移植版やリメイク版での作業量は計り知れません。移植やリメイクを “簡単” とか “お手軽” と勘違いしてバカにするなんて到底できませんね。

 

以上、「お手軽じゃなかった移植」の話でした。

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